2019年3月6日水曜日

なぜオーストラリアは日本に焦点を絞って反捕鯨なのか

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日本、IWC脱退へ


 


3/7(木) 11:51配信 PHP Online 衆知(Voice)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190307-00010000-voice-pol

鯨を“殺し続ける”反捕鯨国アメリカの実態

 日本政府は昨年12月26日、鯨資源の管理を担うIWC(国際捕鯨委員会)からの脱退と1988年以来となる商業捕鯨再開を表明した。
 今年7月から、日本近海の排他的経済水域内(200海里)において商業捕鯨を再開する予定である。

 八木景子氏は2015年、和歌山県太地町のイルカ漁を批判した『ザ・コーヴ』(2009年、米アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞)の反証として『ビハインド・ザ・コーヴ 捕鯨問題の謎に迫る』を発表し、大きな話題を呼んだ。
 捕鯨をめぐる政治の裏側を取材した八木監督は今回、政府の決断をどう評価したのか。
 さらにIWCという国際組織の実態について聞いた。

※本稿は『Voice』3月号、八木景子氏の「反捕鯨プロパガンダに屈するな」を一部抜粋したものです。
聞き手:編集部

■反捕鯨国からも評価された作品

――八木監督の『ビハインド・ザ・コーヴ』は、日本の豊かな捕鯨文化を伝え、反捕鯨の環境保護団体への取材も敢行することで、運動の実態を浮き彫りにしました。
 作品に込めた思いについて教えてください。

【八木】:
 本作を撮ろうと思ったきっかけは、2014年3月に国際司法裁判所が日本の調査捕鯨の中止を命じた、と報じられたことです。
 日本の鯨文化がなくなってしまうのではないか、という危機感を覚えると同時に、捕鯨の歴史や文化が国内外で正しく伝わっていない、と感じました。
 そこで、イルカの追い込み漁を行なっている和歌山県太地町に4カ月間滞在しながら、取材・撮影を行ないました。
 制作と配給に掛けた800万円はいずれも自費で、なぜあれほど捕鯨問題にのめり込めたのか、自分でも不思議です(笑)。

――その甲斐あって2015年の公開以降、同作は世界中で注目を集めています。

【八木】:
 2018年にはロンドン国際映画制作者祭で長編ドキュメンタリー最優秀監督賞、ニューヨーク国際映画制作者祭で審査員特別賞を受賞するなど、反捕鯨国と思われていたイギリスやアメリカの映画祭でも幸い、高評価をいただきました。
 ロンドンの同映画祭では、パッション(熱意)とバランス(調和)がある、映画の構成が良い、という3つの評価をいただき、ニューヨークの同映画祭では「これまで知らなかった捕鯨に関する歴史的背景を伝え、教育的な側面もある」とのことでした。
 審査員は反捕鯨の人ばかりでしたが、ある意味でフラットに見てもらえたと思います。
 本作が日本の捕鯨を世界に理解してもらう1つの契機になったとすれば、嬉しい限りですね。

■科学的議論が通用しないIWCの実態

――IWCからの脱退を決めた日本政府の決断をどのように受け止めましたか。

【八木】:
 政府の決定は当然で、むしろ遅すぎたのではないか、と思います。
 メディアでも報じられているとおり、IWC脱退の決断については、安倍晋三首相と二階俊博・自民党幹事長の力が大きい。
 安倍首相の地元である山口県下関市は「近代捕鯨発祥の地」として知られます。
 また、和歌山県太地町は二階幹事長の選挙地盤です。
 『ビハインド・ザ・コーヴ』が2015年にモントリオール世界映画祭に正式出品されたことを受けて、自民党本部で上映された際、二階幹事長には隣の席で一緒に鑑賞していただきました。
 同じく和歌山県が地盤で捕鯨議連メンバーの鶴保庸介議員も、入院中に2回、自民党本部で1回、計3回も観たとのことでした。

――脱退の経緯をあらためてお聞かせください。

【八木】:
 IWCが1982年に「商業捕鯨」のモラトリアム(一時停止)を決定して以降、日本は87年から鯨のデータ収集のために南極海や北大西洋で「調査捕鯨」を開始する一方で、翌年に商業捕鯨を停止しました。
 その後、30年にわたり日本が科学的データをもとに商業捕鯨の再開を訴え続けても、いっこうに提案は聞き入れられません。
 たとえばIWCの科学委員会は
 「鯨資源包括的評価の結果、南氷洋のミンククジラは76万頭と認め、現在の管理方式に基づけば、百年間に毎年最低2000頭から4000頭を捕獲することが資源に何の問題も及ぼさず可能である」
とすでに公表しています。
 しかし、日本がこの実証結果をもとに商業捕鯨の再開を求めても、反捕鯨国はいっさい取り合わずに「鯨そのものがエコの象徴」と言い続ける。
 日本がIWC分担金の最大の負担国として毎年、約2000万円を支払ってきたにもかかわらず、「自然保護に逆行する捕鯨は時代遅れ」というイデオロギーによって声を封じられてきたのです。
 IWCは本来、「世界の鯨類資源を保存管理し、貴重な海の幸を将来にわたって利用を可能とすることを目的として」(国際捕鯨取締条約=ICRWより)発足した組織です。
 ところが、実際は「利用」の側面はなかったかのように無視され、鯨の保護のみが強調される組織に変質してしまった。
 たとえば昨年9月、ブラジル・フロリアノポリスで開催されたIWC総会で、日本は以下の提案をしました。

(1)関連小委員会でコンセンサス合意が得られた措置について、総会の可決要件を緩和(現行の4分の3から過半数に引き下げ)
(2)資源が豊富な鯨種に限り、商業捕鯨のための捕獲枠設定を規定

 しかし、反捕鯨国は
 「先住民生存捕鯨と商業捕鯨とは異なるものであり、商業捕鯨につながるいかなる提案も認めない」
 「IWCは保護のみを目的に『進化』しており、『持続的捕鯨委員会』の設立やモラトリアムの一部解除はいっさい認められない」
 「このように重要な提案について短期間で結論を出すことは、手続き上問題がある」
として、日本の提案を粉砕しました。
 議決の結果、アメリカやオーストラリア、EU(欧州連合)加盟国などの反捕鯨国による反対41票、棄権2票(韓国、ロシア)、賛成は太平洋やカリブ海の島嶼国など27票のみでした。
 鯨類の保護・持続的利用の両立と、立場の異なる加盟国との共存を訴える日本の立場について、反捕鯨国は「商業捕鯨を認めるいかなる提案も認めない」と強硬に反対したのです。

■鯨を“殺す”米軍のソナー音

――捕鯨を産業とする国と反捕鯨国とのあいだには、認識の埋めがたい隔たりが存在する。

【八木】:
  ところがその反捕鯨国のアメリカやイギリスが、じつはプラスチック廃棄や重油流出による環境汚染や商業船の騒音によって、鯨やイルカを苦しめ、死に至らせている事実はクローズアップされません。
 とりわけ深刻なのが、アメリカ海軍の軍事演習などで発せられる大音響のソナー音です。
 低周波の音源から480km離れた地点でも140デシベル(ヘビーメタルのライブ並み、大型の鯨の動作に影響を及ぼすとされる水準の100倍以上とされる)の大音量で、中周波ソナーはさらに広く使われています。
 最近、ニュースで話題になる浜辺に打ち上げられた鯨の死因について、ソナー音が原因ではないか、といわれています。
 多数の鯨やイルカがソナーを浴びて方向感覚を失い、脳内出血を起こして沿岸に座礁しているという。

 当の米海軍も2013年9月、ソナー音によって
300頭以上の鯨やイルカが死に、
重傷を負うものが1万頭以上、
異常行動を起こす個体に至っては2000万頭に上る
ことを認めています。

――2000万頭以上の海洋哺乳類を危険に晒すほうが、捕鯨よりよほど問題に思えてしまいます……。

【八木】:
 しかし、米海軍はソナー音が海洋哺乳類に与える害について認めながらも、演習を中止することはありませんでした。
 カリフォルニア地裁は同年、ソナー音の危険性を訴えた環境活動家の主張を受け入れる判決を下したものの、演習の許可基準を再検討するよう求めるにとどめました。
 アメリカは捕鯨国を糾弾する一方、大量の鯨をいまでも殺し続けているともいえるのです。

八木景子(映画監督)




映画『ビハインド・ザ・コーヴ~捕鯨問題の謎に迫る~』予告編


『ビハインド・ザ・コーヴ』捕鯨問題の謎に迫った映画をアメリカで配給・上映支援プロジェクト



人民網日本語版配信日時:2019年4月2日(火) 21時30分
https://www.recordchina.co.jp/b699687-s10-c20-d0035.html

30年続いた南極海での「調査捕鯨」終了、
日本が商業捕鯨再開へ―中国メディア

南極海で2018年度の「調査捕鯨」終了させた日本の船団が3月31日に日本に帰国した。
日本政府は国際捕鯨委員会(IWC)から脱退することを発表しているため、約30年間続けてきた南極海での「調査捕鯨」はこれで幕を閉じることになる。
中国新聞網が伝えた。

日本の水産庁は、IWCから脱退した日本は、7月から日本の領海と排他的経済水域(EEZ)での商業捕鯨を再開する計画で、南極海における国際協同鯨類目視調査は継続するとしている。

提供/人民網日本語版・編集KN)



人民網日本語版配信日時:2019年7月2日(火) 16時20分
https://www.recordchina.co.jp/b726341-s10-c30-d0035.html

日本がIWC脱退 「商業捕鯨」の背後で何を考えているのか

 6月30日、日本は国際捕鯨委員会(IWC)から正式に脱退し、南極と太平洋北部における「調査目的」での捕鯨活動を停止した。
 7月1月には商業捕鯨を再開するという。
 中国新聞網が伝えた。

▽:捕鯨は日本の「文化遺産」? 

 世界最大の捕鯨国である日本が、なんとしてでも捕鯨の権利を守り抜こうとする最大の理由として挙げるのは、クジラを捕獲し、クジラの肉を食べるのが日本の伝統文化であり、4千年も昔の縄文時代にさかのぼる保護すべき文化遺産だからということだ。
 しかしこれは必ずしもすべての真相ではない。
 海洋学者のティロ・マアクさんは、「古代に日本人がクジラの肉を食べていたとしても、ごく限られた上層の人だけで、庶民の口には入らなかった。だから飲食の伝統だとはまったくいえない。おまけに遠い南極海での捕鯨行為はここ数十年の間に始まったことで、古い歴史的な根拠は何もない」と話す。

 日本が挙げるもう1つの理由は、一定の回復期間を経て、一部のクジラは数が増え、すでに絶滅の危機には瀕していないので、それを捕獲しても生態系への影響はないということだ。
 しかし実際の状況をみると、捕鯨活動の多くはすでに停止したものの、海洋の生態環境の悪化と人類の活動の影響、クジラ類の長い生長期間などにより、クジラの数が回復するには非常に長い時間がかかる。
 シロナガスクジラ、イワシクジラ、ナガスクジラなどは、数十年間にわたり厳しく保護されてきたが、未だに絶滅の危機から脱せていない。
 また日本は絶滅危惧種のクジラは捕獲しないとしているが、実際の捕鯨プロセスでは、誤って捕獲するケースがたびたびみられる。
 より懸念されるのは、英紙「ガーディアン」の報道によれば、2018年の南氷洋の夏の捕鯨シーズンに、日本は捕鯨船を2隻しか出動させなかったにもかかわらず、ミンククジラ333頭を捕獲し、そのうち妊娠中の母クジラが122頭がいたほか、子どものクジラも114頭に上ったことだ。
 ミンククジラの妊娠期間は10カ月で、1回の出産で生むのは1頭だ。
 このペースで捕鯨活動が続けば、一度は絶命の危機から脱したミンククジラは再び危機に瀕することになる。
 文化的な理由や環境に関する理由のほか、捕鯨支持派の人々は捕鯨は水産資源の保護につながると奇妙なロジックを持っている。
 「クジラ類が食べる魚は人類の漁獲量の5倍にあたるので、クジラの数を制限する必要がある。そうしなければクジラが他の魚類の生存を脅かし、人類から食物を奪うことになる」と述べる日本の政府当局者がいる。

▽:「商業捕鯨」の背後で何を考えているのか? 

 分析によると、日本が捕鯨にこだわる主な原因は経済、文化、政治など多方面にわたる。
 まず、捕鯨を禁止すると失業問題を引き起こす可能性があるという。
 捕鯨産業では約10万人が働いて生活しており、捕鯨が取り締まりの対象になれば、捕鯨が行われる地方では失業、企業の倒産、財政収入の減少といった危機が確実に起こるという。
 しかしデータをみると、捕鯨が実際にもたらす経済効果はそれほど大きくない。
 日本人は第二次世界大戦後、食糧が不足したためクジラの肉を大規模に食用していたが、今の日本ではこうしたニーズと市場が大幅に縮小した。
 また捕鯨を行う企業は政府からの補助金を受けて、なんとか経営を維持しているというところが多い。
 よって経済的要因は商業捕鯨再開の主要因ではないといえる。
 一部の日本人にとって、文化的な自尊心がより重要である。 
 メディアの論考によれば、日本の一部の人からみると、欧米諸国が日本の捕鯨を批判するのは、自国の文化的観念を日本に押しつけることにほかならないという。
 こうした人々によって、「反捕鯨勢力」の主張を受け入れるかどうかが、「日本の伝統文化が西側と妥協しなければならないのかどうか」という違う次元の話にすり替わっている。 
 海洋資源への依存度の高い島国の日本にとって、一度捕鯨をやめれば、日本の漁業政策と漁業の未来を保障することが難しくなるため、捕鯨は権力闘争のように見えてくる。
 それだけではない。英BBC放送が紹介した日本の研究者・佐久間順子さんによると、「日本がなかなか捕鯨を停止できないのは、政治と大いに関係がある」という。
 報道によれば、日本の捕鯨には政府が関わっており、巨大な官僚構造があり、研究予算や年間計画、キャリアアップの道、年金や保障がある。農業、林業、漁業、牧畜業に従事する人は政権与党の自民党にとって重要な票田であるため、自民党がその利益を保護するのは当然のことだという。



人民網日本語版配信日時:2019年7月4日(木) 18時40分
https://www.recordchina.co.jp/b727170-s10-c20-d0035.html

商業捕鯨を再開した日本、
失敗するに決まっている?

 7月1日、日本は正式に商業捕鯨を再開した。
 捕鯨船8隻が北海道の釧路港と山口県の下関港を相次いで出発し、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)内での操業に向かった。
 同日午後にはミンククジラ2頭が捕獲され、港で水揚げされた後、作業員により解体された。
 4日に市場に出されるという。
 中国新聞網が伝えた。

 釧路港で終日情報収集していた日本小型捕鯨協会の貝良文会長は、「商業捕鯨が復活した初日に捕獲できた。31年も待った甲斐があった」と述べた。
 国際捕鯨委員会(IWC)は1948年に発足し、日本は51年に加盟した。
 82年にIWCが商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)を決議すると、日本は解除を訴え続けてきた。
 日本は88年に商業捕鯨の停止を余儀なくされたが、「科学的調査」の名目で「調査捕鯨」を続けてきた。
 2018年末から19年春にかけて、日本の調査捕鯨は南極海域だけでミンククジラ333頭を捕獲した。
 IWCを脱退して今後は調査捕鯨を続けることができなくなったため、このほど商業捕鯨を再開したが、
 商業捕鯨の通年のクジラ肉供給量は調査捕鯨を下回り、水産庁は20年以降は捕獲可能な頭数を383頭と定める。

 日本の共同通信社の指摘によると、日本政府はIWC脱退後の海外からの厳しい批判を恐れて、一般の魚類よりも厳格な捕獲枠を設定し、どの種類のクジラも資源量の1%以下という持続可能な捕獲枠を設定した。
 日本は「100年間捕獲を続けても資源に悪影響はない頭数だ」としている。

▽商業捕鯨の再開に多方面から批判の声 

 日本の商業捕鯨再開に対し、外部から非常に激しい批判の声が上がっている。
 英紙「タイムズ」や英BBC放送を含む多くのメディアが6月29日、日本が国際社会の批判を無視して、捕鯨船を大海に乗り出したことを批判したと同時に、日本の捕鯨の持続性に疑問を投げかけた。
 IWC本部がある英国では同日、日本の捕鯨再開に抗議するデモが行われた。
 参加者は「日本は恥を知れ」とのプラカードを掲げ、「クジラを救え」と叫びながら行進した。
 日本はこれまでずっと「伝統」を捕鯨再開の理由にしてきたが、日本紙「日本経済新聞」の論説によれば、日本国内でも捕鯨再開を支持する声は小さいという。
 日本の業界関係者の多くが懸念するのは、過去31年の間に、クジラ肉は大衆が食べたい食品ではなくなっており、「伝統食」の復活というのは疑わしいということだ。
 また国際的に非難を浴びる中で、日本のイメージが悪化し、捕鯨を行う都市の観光産業が打撃を受けるのではないかとの懸念もある。
 ここ数年、商業捕鯨に対する国際社会の各界からの批判は、日本の国家イメージと観光産業にマイナス影響を与えている。
 日本以外の捕鯨国のノルウェーやアイスランドなどは、捕鯨への支援を徐々に削減している。
 IWCのまとめた統計によれば、17-18年のアイスランドの捕獲頭数は17頭しかなく、捕獲枠の378頭を大きく下回り、ノルウェーも432頭で捕獲枠の1278頭を遥かに下回っていた。
 AP通信はさらに踏み込んで、「日本人も生態環境ツアーの方が捕鯨よりずっとよい選択肢だと考えるようになってきた」と伝えた。

 これまでずっと捕鯨に反対してきた人からみると、クジラ肉に対する市場のニーズが減少し、動物愛護の考え方が変化してきた時代背景の中、日本が31年ぶりに商業捕鯨を再開したことは、「失敗するに決まっている行動」だという。



現代ビジネス 2019.07.05 松岡 久蔵ジャーナリスト
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65701

「商業捕鯨再開」欧米の日本バッシングはなぜ盛り上がらなかったのか
そもそも、捕鯨を取り巻く状況は厳しい

 今月、商業捕鯨が約31年ぶりに再開された。
 懸念されていた国際社会からの批判は、日本政府の周到な根回しにより最小限に抑えられたが、問題は鯨肉の需要があるかどうかだ。
 かつてのような消費量は到底見込めない上、むしろ今後の業界では、これまでのように、捕鯨再開に取り組む自民議員の力を借りて補助金を受け取ることも難しくなる。
 皮肉なことに、商業捕鯨の再開によって、捕鯨業界の真価が厳しく問われることになるのだ。

■「無風の船出」ではあったが…

 7月1日、捕鯨基地のある北海道釧路市と山口県下関市で捕鯨船の出港式が開かれた。
 商業捕鯨には、
1」:下関港を出発して、領海と排他的経済水域(EEZ)内の沖合で数ヵ月間操業する母船式捕鯨と、
2」:釧路市や宮城県石巻市などを拠点に日帰りで操業する沿岸捕鯨
二つの方式があり、それぞれの船が操業を開始した。
 水産庁が同日発表した捕獲枠は、年内の捕獲上限を227頭、来年以降は383頭とする計画だ。
 ニタリクジラやミンククジラなど、いずれも「推定される資源量の1%未満」を基準に算出している。
 ただ、これまで行っていた調査捕鯨では、南極海で333頭、北西太平洋で304頭、計600頭以上を年間で捕獲していただけに、半分以下になる。
 同庁によると、「100年間捕獲を継続しても資源に悪影響を与えないとIWC科学委員会が認めた、極めて保守的な基準」という。
 追加船舶の増強もなく、淡々と再開された商業捕鯨だが、危惧されていた日本に対する国際的批判は、ごく一部の欧米メディアで取り上げられたのみで「ほぼ無風」の船出となった。

 1日の両出港式にはオーストラリアなどから複数の海外メディアも取材に駆けつけたが、取り上げた記事は少なかった。
 その背景に、捕鯨問題自体が国際的関心を失いつつあること、また日本政府による周到な根回しがあったことについては、以前の記事(「安倍首相が『商業捕鯨再開』のために豪首相を説得した30分間」)ですでに報じた。
 6月28、29日に大阪市で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議が直前にあったため、捕獲枠の発表をぎりぎりまで伏せていたことも功を奏したようだ。

■消費量はかつての「約80分の1」

 ついに再開にこぎ着けた商業捕鯨だが、多くの国民は、「いまさらクジラを捕っても、需要がないのではないか?」という疑問を抱いていることだろう。
 これまでも、調査捕鯨に税金を投入することに対して「無駄遣い」と批判する声は決して小さくなかった。
 水産庁の資料などによると、国内の2017年度の鯨肉消費量は約3000トンで、最盛期の1962年度の約23万トンに比べ、約80分の1にまで激減している。
 30代以下の若年層は、食べたこともないという人が大半だ。
 現在では、捕鯨文化のある下関市や和歌山県太地町などを除けば、専門店などでしか提供されていない。
 これまで、調査捕鯨で捕れた鯨肉は、調査主体である日本鯨類研究所(鯨研)が販売委託した共同販売(株)が、加工業者や卸売業者へ売る形式をとってきた。
 しかし現在、鯨肉は「在庫過剰」の状態になっているという。
 ある水産庁OBはこう指摘する。
 「調査捕鯨では毎年決まった量の頭数を捕獲するため、鯨肉の供給量自体は一定でした。
 消費が追いつかず、在庫過剰になるのは当然のこと。
 今でも、共同販売が保有している鯨肉在庫量は『極秘中の極秘』です。
 業者からは足下を見られかねないし、反捕鯨団体からも『こんなに余っているなんて、調査捕鯨は必要あるのか』と突き上げられかねませんからね。
 ステーキや刺身にして食べられる赤身肉は比較的早く売れるのですが、問題は『白手もの』と呼ばれる皮などの部分。
 これは味噌汁などにして食べるのですが、捕鯨文化が根付いた地方でないと馴染みがないので、はけにくい。
 これが在庫を増やしているのです。
 自民党捕鯨議員連盟の議員の中には、『自衛隊に食べさせればいい』とか『給食で復活させればいい』ということを言う人がいますが、自衛隊に『余った食材を処理させる』なんてことをすれば、まずバッシングを受けるでしょうし、給食にクジラを出すにはコストがかかる。
 今回の商業捕鯨再開にあたって、年内の捕獲枠が少なめに設定されたのは、調査捕鯨で余った鯨肉を先になるべく処分したいからだ、というのが業界での見方です」

■「給食で使う」のも簡単ではない

 調査捕鯨では乱数表を使って捕獲する鯨を決めるため、クジラを性別や大きさで選んで捕獲することはできない。
 漁場も選べず、割高なコストを支払ってきた。
 一方の商業捕鯨は、捕獲対象のクジラを自由に選べるため、効率は上がり、価格は下がるとされる。
 実際、業者側はどう考えているのだろうか?
 九州地方の老舗鯨肉加工・卸売業者はこう話す。
 「基本的には、捕鯨文化が根付いた地方で細々と続いていく産業になると思います。
 大規模商業捕鯨が始まったのは戦後の食糧難の時代で、その当時は『クジラ御殿』が建つほど我々の取扱量も多かった。
 しかし、それ以前の捕鯨はあくまで各地域に根ざしたものでしたから、これでようやく時代が一周して、昔の姿に戻ったと冷静に捉えている業者が多いのです。
 給食については、釧路や下関、太地などならまだしも、全国的には難しいでしょう。
 よく鯨肉には独特の臭みがあると言われますが、給食で使うとなると、どうしても水揚げの後に何回も冷凍・解凍されるため、鮮度が悪くなってしまう。
 子供たちに無理に食べさせれば、むしろクジラ嫌いを増やすことにつながりかねないとも感じています」

■スーパーも取り扱いに慎重

 かつてのように全国的に消費を拡大するのは無理としても、産業として採算が合うようにするには、新たな販路の開拓が欠かせない。
 鯨研は販路拡大を目指し、4月からノルウェーの捕鯨企業の日本法人ミクロブストジャパンに新たに販売を委託し、飲食店向けのネット販売を始めた。
 このことについて専門紙記者はこう解説する。
 「いまさらネット販売か、と思うかもしれませんが、鯨肉の閉じられた商流の中では、新規参入はほぼ不可能でした。
 卸売・加工業者への連絡手段は電話とFAXしかないという状況で、長野など内陸部で扱おうと思っても不可能だった、という事情があります。
 そのようなローテクで、鯨肉の販売が増えるはずもありません。
 今回、販売委託先となったノルウェー企業の日本法人社長は元鯨研社員。
 といっても天下りではなく、鯨研の保守的な雰囲気が合わず、販路開拓と鯨肉食の普及を目指して独立したようです。
 むしろ、そういうやる気のある社員が、外へ飛び出さなければ活動できないところに鯨研の体質が反映されているともいえる。
 果たして今後、どれだけ伸ばせるか」
 さらに、いまのところはスーパーをはじめ大手流通各社も、反捕鯨団体からの抗議を恐れて鯨肉の取り扱いには慎重な姿勢を取っている。
 販売拡大の前途は多難といえそうだ。

■捕鯨議連から業者への不満
 昨年末の政府によるIWC脱退決定までに、自民党捕鯨議連による長年の働きかけがあったこと、また同議連が動物愛護を主張する欧米諸国に対抗してきた経緯は、筆者の以前の記事でも詳報している(「もう脱退しかないのか?日本が窮地に陥った『国際捕鯨委員会』の内幕」「国際捕鯨委員会脱退を日本政府が決めるまでの全深層」)。
 だが、「悲願」を実現した今になって、議連内部では捕鯨業界に対する不満が出始めているという。
 議連幹部がこう解説する。
 「年明け頃から『調査捕鯨の時のような税金のサポートがなくなってしまうと、十分な供給責任を果たせる自信がない』と弱気なことを言う捕鯨業者が出始めて、辟易する幹部も出てきている。
 『障壁がなくなったのだから、後は民間でやってくれ』というやり方ができないとなると、サンマやマグロのような他の魚種の業者に対して、説明がつかない。
 『なぜ、売れもしないクジラだけがいつまでも特別扱いなのか?』と、不満が噴出する事態にもなりかねません。
 一番の『重石』は我々がどかしたわけだから、そこから先は業者が自分たちでやってほしいのですが」
 また、今後いつまで商業捕鯨が続くかについては、全国紙社会部記者がこう指摘する。
 「太地町のある和歌山県出身の二階俊博幹事長がいなくなれば、一気にトーンダウンするでしょうね。
 二階氏は商業捕鯨再開をライフワークにしてきましたが、若い議員はもうそこまで捕鯨に熱心ではない。
 水産庁も2、3年は補助金を出すでしょうが、そこから先は望み薄でしょう」

■結局、捕鯨問題とは何だったのか

 クジラは20世紀以降、国際政治の波にもっとも翻弄された動物といえる。
 欧米と日本の食文化の差異、人種差別、環境運動の高まり、米ソ冷戦など様々な要素が複雑に絡み合い、政治的な争点となった。
 実際にIWCでも、日本の商業捕鯨を停止させるために、アメリカなどがEU諸国をIWCに突如引き入れて反捕鯨陣営の票をかさ増しし、日本もそれに対抗してアフリカ諸国などを捕鯨賛成陣営に引き入れるといった攻防があった。
 このとき日本が味方に引き入れた国には、見返りとして政府開発援助(ODA)をはじめ様々な便宜が図られたことは公然の秘密となっている。
 自民党捕鯨議連幹部によると、今回のIWC脱退騒動絡みでも、日本に協力したラテンアメリカ諸国において、鯨肉加工施設を数億円規模で建設するといった施策が決定しているという。
 和牛受精卵やイチゴ種苗の海外流出が大きく取りざたされたことを見ても、食文化にかかわる問題は容易にナショナリズムへ接続する性質がある。
 世界中で、いや日本でもさほど食べられているわけではない鯨肉をめぐり、反捕鯨国と捕鯨国との間で馬鹿馬鹿しいほどのエネルギーを使った対立が繰り広げられてきた。
 しかしいまや、日本の地位低下や人々の環境問題に対する関心の変化により、捕鯨に対する関心は国際的にも下火になり、「過去の問題」となりつつある。
 捕鯨をめぐる様々な騒動で、もっとも振り回されたのは、伝統的に地元で捕鯨を営んできた漁師であり地域住民だろう。
 反捕鯨団体による時に暴力的な活動の標的となり、映像に撮られて世界中に「野蛮な民族」として晒され、理不尽な思いを味わったことは想像に難くない。
 一方で日本の新聞・テレビなどマスコミも、「捕鯨は日本の文化」と過剰にナショナリズムをあおるか、「捕鯨を再開すれば国際社会から批判を受ける」と孤立論を展開するか、という紋切り型の報道ばかり。
 反捕鯨国の真のモチベーションや、税金頼みの捕鯨産業が抱える構造的問題といった論点に切り込むことはほぼなかった。
 令和の日本にとって、捕鯨問題は振り返るべき「教訓」の塊であると言うこともできるだろう。
 それを持ち越さないためには、まずは客観的事実と向き合うことが不可欠だ。
 イデオロギー闘争の具となりがちな捕鯨という領域にこそ、なおさら冷静な報道と分析が必要ではないか。


Record china配信日時:2019年6月23日(日) 17時30分
https://www.recordchina.co.jp/b722797-s0-c30-d0058.html

年間2000頭のクジラの死を放置する韓国、
日本の捕鯨再開にも「抗議は難しい」=韓国ネット「恥ずかしい」

  2019年6月21日、韓国・京郷新聞は「年間2000頭の鯨の死を放置している韓国、日本の乱獲にも抗議は難しい」と題する記事を掲載した。
 記事によると、韓国国会で19日に行われた討論会「韓国内の海洋哺乳類の保護および不法・未報告・未規制(IUU)漁業根絶案と米国の海洋哺乳類保護法改正への対応の論議」で、国際環境団体である環境正義財団のキム・ハンミン運動家は
 「国際捕鯨委員会(IWC)に韓国が報告した2014年の鯨類混獲(漁獲対象ではない魚類を意図せずに獲ること)数は1835頭だが、これは他の10カ国の平均である19頭に比べて非常に高い水準」と説明し、
 「韓国では混獲した鯨を売って食べられることが原因の1つ」と指摘した。

 同日の討論会は、米国が2015年8月に海洋哺乳類保護法を改正し、2022年から海洋哺乳類混獲リスクのある方法で漁獲した水産物の輸入を禁止することに対応すると共に、韓国内の海洋哺乳類を保護する方法を模索するため開催された。
 韓国では確認されているだけでも年間約2000頭の鯨類が混獲により犠牲となっているが、特に網を使用する漁法は混獲の発生率が高く、こうした方法で漁獲された水産物は対米輸出が不可能になる上、今後は欧州輸出にも影響を及ぼす可能性があるという。
 韓国では捕鯨が禁止されているが、混獲・座礁した鯨肉の販売や流通は禁止されていないため、鯨の移動ルートを調査し、意図的な混獲で収入を上げている漁民もいるという。
 特に韓国の海に残る唯一のヒゲ鯨であるミンク鯨は「海のロト」とも呼ばれているという。
 また、討論会では日本政府が7月からIWCを脱退し、捕鯨を再開することも韓国内の鯨類の保全に悪影響を及ぼすと指摘された。
 しかし記事は「混獲された鯨の販売を許可している韓国の実情を考えると、日本の鯨乱獲に抗議することは難しい」と指摘している。
 そのため討論会に参加した専門家や市民団体の多くが
 「混獲された鯨肉の流通を禁止したり、段階的に縮小したりするべき」との意見に賛同していたという。

 これについて、韓国国立水産科学院鯨研究センターのキム・ヒョンウ博士は「鯨の保全のためには実態の把握が最も必要だが、人員と予算の問題で難しい状況」と説明した。
 韓国政府関係者は「先月訪韓した米国立海洋大気庁関係者が『韓国政府は対米輸出だけを気にかけているが、米政府が気にしているのは水産物ではなく、海洋哺乳類をどう保護するかという点だ』と皮肉を言っていた」とし、「韓国政府は対米輸出の減少を最小化させると共に、哺乳類の混獲を減らすため学会、市民団体、水産業界と協力していく」と述べたという。

 これに、韓国のネットユーザーからは
 「他に食べるものはいくらでもあるのにまだ鯨を食べるの?」
 「流通を禁止すればいい。鯨が自らやって来て網に引っかかるケースが1800を超えるなんて常識的におかしい」
 「網に引っかかる鯨が他の国の約100倍?恥ずかしい」
 「鯨の通る道はだいたい決まっていて、漁民らのほとんどがその道を知っている」
 「日本の捕鯨を批判している場合じゃなかった。急いで対策を講じるべきだ」
などと訴える声が寄せられている。

 一方で
 「死んだ鯨を販売できなければ、ただ海に捨てることになる。それもどうかと思う」
 「急に禁止にしたら漁民たちも困るだろう。数を決めて獲れるようにしたら?」
との声も見られた。



カンガルーの年間駆除枠780万頭
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注)音声のみ





 
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