
● 初めに送られてくる大腸ガン検診の案内
隔年で大腸ガン検診のキットが送られてくる。
無料である。
初めに案内がきて、その後にキットが送られてくる。
22カ国語が載っているが、日本語はない。
つまりさほどに日本人の老年層はオーストラリアに住んでいないということであろう。


● キットの鏡紙と裏に印刷されている言語
検診は検便で、サンプル2個を送ると検査結果として、陽性か陰性かの通知がくる。
キットはサンプル体2ケ、トイレシート、サンプル保存袋、それに返信封筒よりなる。
ほかにチェックリストがあり、サンプルと書き込んだリストを送ることになる。
検便方法であるがこれまで数回のものとは段取りが異なっている。
これまではサンプル1を採ってから、数日たってサンプル2を採っていた。
おそらくこのどちらもがネガテイブなら陰性判断がなされるのであろう。
今回はサンプル1を採ってから、その日に、あるいは翌日に、または至近の日にサンプル2を採るように変わっている。
解析方法の精度が変わったのか、あるいは別々の結果が出たときの判断に苦しむことのないようにか、この辺のところはよくわからない。
無償で行われるのは65歳から74歳までとある。
ということは、これが最後になりそうである。
検診方法のガイドをコピーしておこう。




ガンは日本人の死亡原因のベスト3に入る。
精密検査を受けたことはないのでくわしくはわからないが、前立腺ガンかもしれない以外のガンの症状はない。
姉は60歳代にガンで亡くなった。
よって、私もガンになりやすいかもしれないという思いはある。
でももう70歳代に入ったら何で何時死のうと、「死に時に死ぬだけ」のことで、どうこういうことでもない。
八十を超えてまで「生にしがみつきたい」とは、なかなか思いにくい。
前立腺ガンは男性の老人病であるが、死に至る病ではない。
下手に手術をうけると、その後の方が大変だと聞く。
齢をとればいろいろな病が出てくる。
夜中に数回お手洗いにいかねばならないといった、ちょっとした辛さは十分に耐えうるものである。
夜寝られなかったら昼間寝ればいい。
人間の体は決して睡眠不足にはならないようにできている。
一時、その状態になっても体が自動的に休みをとるように機能してくれる。
日本なら冬場の真夜中のお手洗いはきついだろう。
でもここオーストラリアではそんなこともない。
ありがたいことである。
ちなみに、こちらにきて四半世紀がたつが健康診断や人間ドックなどのお世話になったことはない。
日本にいたときは40代で今よりはるかに若かったのに人間ドックに2回かかっている。
【結果 ネガテイブ】
検査結果が送られてきた。
ネガテイブ(陰性)であった。

【参考】
『5/10(金) 12:14配信 読売新聞(ヨミドクター)石井洋介
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190510-00010000-yomidr-sctch
水洗化で感染症減も、見逃しやすくなった「大腸がんの兆候」
■うんこで救える命がある
北里柴三郎が新千円札の肖像画になるみたいですね。
現在の千円札に描かれている野口英世と、北里の共通点をご存じでしょうか。
北里は19世紀後半、破傷風の血清療法の確立やペスト菌の発見で活躍、野口は20世紀に入り黄熱病の研究に尽力しました。
2人は、菌やウイルスによって起こる病気と戦った偉大な感染症の研究者であり、野口が北里の研究所に助手として入り、実質の弟子となりました。
当時、世界では感染症をどう予防、治療するかが大きな課題でした。
そして、感染症とうんこは切っても切れない関係にあります。
特に、うんこを介して感染が広がるコレラは19世紀、イギリスをはじめ世界各国で大流行し、人々を恐れさせました。
下痢症状を起こし、死にも至るためです。
近代化と都市化が進む中で、人々が都市部に集中し、うんこを適切に処理しきれなくなったこともあり、コレラの流行につながりました。
日本では海外との交易が盛んになった明治時代に入り、コレラは流行しました。
10万人以上が死亡した年もあります。
その後は、結核菌が原因の結核患者が増え、毎年10万人前後が亡くなりました。
昭和時代前半までは感染症が猛威をふるいました。
世界的に、うんこは感染を広げる要因の一つとして隔離される対象になりました。
上下水道を完備する中でコレラによる死亡は減少しました。
研究者たちの努力で抗生物質やワクチンが開発され、感染症によって命を落とす人は劇的に減りました。

●水洗化で感染症減も、見逃しやすくなった「大腸がんの兆候」
病の「主役」は、感染症から、がん・脳血管疾患・心疾患へ移行
■入れ替わる病の「主役」
感染症にかわって、現代は、がん、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患、心筋梗塞や狭心症などの心疾患、という、細胞や血管の老化によって引き起こされる病気が3大死因を占めるようになりました。
現代の代表的な病気と、かつて脅威だった感染症との大きな違いは、発病の初期に症状が表れるかどうかではないでしょうか。
感染症は、咳(せき)、熱、下痢など様々な症状が出るため、本人が病気になったと自覚しやすいものです。
これに対し、がん細胞が体の中に生まれても、すぐに気付くのは難しいものです。
例えば大腸がんは、日常生活を送る中で静かに進行し、なかなか症状が出ないといわれています。
「Silent Killer(サイレントキラー)」と呼ばれるゆえんです。
高血圧もほとんど症状が表れません。
測定しなければ自分が高血圧であると気付かないままの状態が続きます。
治療せずに過ごしていると、脳梗塞や心筋梗塞による死のリスクが高まるとされています。
■病気を自覚しにくい時代到来
発病初期に症状が出にくい病気が多くなり、「病気であると自覚しにくい時代」が到来したといえます。
本人が発病を自覚していなければ、病院や診療所を受診しないため、そもそも治療を始められません。
健康診断などで病気が見つかり、医師が「治療を始めたほうがいい」と説明しても、本人に自覚症状がないと、仕事を休んでまで病院に行こうという気持ちが湧かないのもよく分かります。
「どうすれば症状が軽いうちに受診をしてくれるか」
「処方する薬をどうすればきちんと飲んでもらえるか」。
病気を早く見つけて治療を始めてもらう方法や、治療を続けてもらう方法を日々考えています。
人々がやる気を起こし、行動を変える「行動変容」の視点を僕は重視しています。
人の感情に作用して人の行動を変える催眠術のような処方は存在しません。
行動を変えるのは患者さん本人なのです。
少し前までは僕ら医師が患者さんに治療の方向性を一方的に示し、治していました。
でも今は、医師と患者が「一緒に治す」時代にシフトしてきていると思います。
ベストな治療は、皆さんの協力なしには提供できないと考えています。
■じっくりうんこの観察を
ここで、感染源として隔離されたうんこに再び注目したいと思います。
サイレントキラーと呼ばれる大腸がんですが、血便が出る、下痢と便秘を繰り返す、便がだんだん細くなる、残便感がある、というような症状が他の症状に比べて比較的早い段階で出ることがあります。
いずれもうんこをじっくり観察していなければ異変に気が付きません。
うんこは、トイレで自動的に流されてしまうほどに嫌われる存在になってしまいました。
ですが、皆さんが気にする習慣を持つことで、もしかしたら大腸がんの症状を自覚できる瞬間があるのではないかと考えています。
また40歳以上の方であれば年に1度の大腸がん検診が推奨されています。
うんこの変化が出るさらに前の段階で引っかかる可能性もあるため、こちらも併せて覚えておいてください。
どんな変化も小さな一歩から始まります。
試しに今日から便を観察する「観便」を始めてみませんか?
観便ができるようになったら、次は毎日のウォーキングというように、段階を踏んで、健康な人生を送るための小さな小さな行動変容を起こすきっかけになれば幸いです。
石井洋介(いしい・ようすけ) 医師、日本うんこ学会会長
』
『
「見つかりにくい」大腸がん特集…こんな症状には注意
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20151001-OYTEW52646/?from=yh
』
『
東洋経済オンライン 2019/05/19 6:20 奥 真也 : 医学博士
https://toyokeizai.net/articles/-/280419
令和時代、人は「死」を意識しないようになる
「誤診」をなくすことが最大の課題だが…
ロケット級の進歩を遂げつつある医療。iPS細胞を利用して臓器をつくり出す再生医療や、AI医師の登場だけではなく、診断、手術、創薬、医療機器、救命救急、予防……。
このまま医学が完成していけば、死の脅威をもたらす病気はほとんどすべて姿を消し、病気では人が死なない「不死時代」が到来すると、医学博士の奥真也氏は著書『Die革命――医療完成時代の生き方』で述べている。
いずれ訪れる「不死時代」とはどのような未来なのだろうか。
■がんを完封する時代がやってくる
平穏にすごしていた日々に、突然割って入るがん患者としての生活。幸せの絶頂の裏に忍び寄る糖尿病の影……。
病気によって人生の予定が狂わされた経験を持つ方はたくさんいらっしゃるでしょう。でも、その状況は大きく変わろうとしています。
1981年に世界で初めて発見されたといわれるエイズは、当初は手の施しようがなく、絶望的な病気と思われていました。
しかし、2000年を過ぎたあたりからHIVウイルスの働きを阻害するさまざまな薬が実用化されはじめ、現在では生命を奪う病気ではなくなっています。
エイズの薬のように派手に報道をにぎわせるものもあれば、目立たない進歩を遂げる薬もまた多くあるため、あまり実感がないかもしれませんが、成果を上げている例としては、タミフル、イナビルなど抗ウイルス薬によるインフルエンザに対する強力な治療効果などもそうでしょう。
1回飲むだけでウイルスの増殖を抑えられるゾフルーザという進化した薬も世に出ました。
人類にとって最大の病魔の1つと言われているがんも例外ではありません。
胃がんや大腸がんは、不治の病のリストから消えつつあります。
乳がんや肺がんもそうです。
がんの克服は確実に進んでいます。
2018年には、光免疫療法と呼ばれるがんの標的療法と、近赤外線による光化学反応を組み合わせた新しいがん治療の治験が日本でも開始されています。
また、がん細胞に感染し、溶解させてしまうウイルスを使った薬は、数社が治験の先陣争いをしており、ほどなく世に出てきます。
まさに今、がん治療の地図は大きく塗り替えられようとしているのです。
人類と病気との闘いについて話してきましたが、そもそも、いったいどうなれば、「病気に勝った」ことになるのでしょうか。
ほとんどの方は風邪やインフルエンザなどの「治る病気」を思い浮かべ、病気とは治療をすれば治るものだ、とイメージしていると思います。
しかし残念ながら、病気の9割は治りません。
医療の立場から言えば、必ずしも病気は治らなくてもかまわないのです。
「たいていの病気は治癒しない」し、「治癒する必要はない」というのが医師の感覚です。
ほぼすべてのがん患者は、おそらく風邪などと同じように「がんが完治する」ことを期待していると思いますが、多くのがんは、「治療」はできても「完治」はしません。
医者の立場からすると、「今よりも悪くならないようにはできるが、完治するとは言い切れない」と捉えています。
つまり、病気の9割は、医者にとってつねに「病気」というステータスにあります。
完全に治癒しなくても日々の生活に支障がなければよい。
医療はそこを目指しているのです。
■誰もが「多病息災」で生きていく
ある病気と一生つきあうことになったとしても、その病気が牙をむき、身体に不具合を生じさせたり生命を脅かしたりしなければ困るわけではありません。
この「ある病気とともに生きる」ことを一病息災といいます。
では、一病息災は不死時代にどう発展するのかというと、その姿は、「多病息災」であると思います。
つまり、1つだけではなく、さまざまな病的な状態を持ちつつ、これらがどれも生命を脅かすことなく、生命との間に均衡を保っている状態。
どの病気も、宿主である人間を殺してしまうところにまでは到達しないということです。
多病息災時代においては、つねに自らの中にいくつかの病的な状況があることを理解しなくてはいけません。
それこそが人間の普通の状態なのだから、何も気に「病む」こともないのです。
ただただ自然にそれを受容していればよく、多病がゆえに死ぬことなどないのです。
さて、「不死時代」到来の大きな立役者は、やはりテクノロジーです。
テクノロジーによる医療の進化が近年はより本格化しています。
象徴的なのは、ロボットの導入です。
例えば、1990年代にアメリカで開発された手術支援ロボットの「ダヴィンチ(da Vinci)」。
現時点ではまだAI(人工知能)が搭載されているわけではありませんから、ロボットといっても人間が操作する機械にすぎません。
でも、ここにはイノベーションともいうべき、かつてはなかった進化が起こっています。
たとえ話ですが、身体の硬い人が自分の肩甲骨を手で触るのは簡単なことではありません。
同じようなことが外科手術にもあって、膵臓の裏側にある血管の縫合などは、大きく開腹したうえでほかの臓器の間をかき分け、そこまで手指をくぐらせて作業しなくてはならず、人間には困難な手術です。
でもロボットならば、人間の腕や手では不可能な角度からアクセスすることができ、うまく施術できます。
切除の精度に関してもそうです。
1ミリ幅の切除は、人間なら「神業」ですが、ロボットを使えばさらにその10分の1の幅でも安定して高い精度で切除できます。
よくニュースなどでは「ロボットが人間の代わりを務める」という表現が使われますが、少なくとも医療の場合は単純な代役ではありません。
人間には到底できなかった水準のことをやってくれるのが医療におけるロボットなのです。
■AI診断が人間を凌駕する
私たちはこれから、医療イノベーションの収穫期に入っていきます。
ビッグデータの活用で創薬のプロセスが大きく変わったり、外科手術にロボットが導入されたりと、治療の方法論は大きな前進を遂げつつあります。
しかし、いくら治療の方法論が完成されても、そもそもの「見立て」が違っていたら克服できるものもできなくなります。
医療の完成ということを考えると、あらゆる医療行為の出発点ともいえる「診断」において誤診をなくすことが最大の課題なのは言うまでもありません。
それにはどうすればいいのか。
解決策として、最も有力視されているのがAIの導入です。
2000年代に突入してコンピューターの計算性能がぐっと上がってきたことに加え、人間の脳神経回路をモデルにした多層構造アルゴリズムを用いて、着目すべき特徴や組み合わせをAI自ら考えて決定する「ディープラーニング(深層学習)」の技術が長足の進歩を遂げたことが重なって、AIが人間を凌駕する時代がやってきてしまいました。
それは医療AIについても例外ではありません。
医師の「診察」「問診」はAIが十分に代替できる、ということです。
というのも、AIは人間のように思い込みで病気を見逃すことはありません。
疲労による判断ミスもない。
むしろ、安定的に正確な診断ができます。
つまり誤診率をかぎりなくゼロに近づけることができるのです。
』
『
現代ビジネス 2019.06.16 「週刊現代」2019年5月25日号より
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64920
大腸、肺、胃…がん経験者が語る「こんな思わぬ前兆がありました」
こんなサインが現れたら要注意
■ただの痔だと思っていた
平成が終わる直前の4月29日。
高橋尚子さんや有森裕子さんを五輪メダリストへと育て、マラソン界の「名伯楽」と呼ばれた小出義雄さん(享年80)の告別式がしめやかに行われた。
お別れに訪れた多くの関係者の中には、小出さんを恩師と慕う、日本女子長距離マラソン強化部長の金哲彦さん(55歳)の姿もあった。
プロランニングコーチとしても活躍する金さんは、現在放送中のNHK大河ドラマ『いだてん』でマラソンの指導も行っている。
そんな金さんだが、あと一歩遅ければ、師と仰ぐ小出さんより早く亡くなっていた可能性もあった。
金さんに大腸がんが発覚したのは42歳のころ。
働き盛りと言われる年齢だ。
ステージⅢで、がんが大腸の外にはみ出すほど進行していた。
金さんが当時を振り返る。
「自覚症状は確かにありました。
僕は1年に一回は人間ドックを受けていたのですが、2年続けて便に血が混じる『便潜血』の項目にチェックが入っていたのです。
診断書には『要再検査』と書いてあったのですが、『どうせ痔だろう』と勝手に自己判断して、忙しさから再検査を受けずにいました。
これは私だけではないと思いますが、スポーツマンは、みんな体力に自信があるので、自分が病気になるなんて思ってもみないわけです。
でもその過信の結果、大事ながんのサインを見落としてしまっていた。
もっと早く見つけることができたはずなのに……」
便潜血はあったものの、特にそれ以外の目立った症状はなかった。ところが、しばらくすると身体にこんな異常が出てきた。
「突然、平衡感覚がおかしくなってフラフラしたりすることが増えました。
でもランニング中はその症状は出ず、普通にしているときにだけ出るのです。
念のため脳ドックを受けたのですが、異常なし。
僕自身も自律神経失調症か、もしくは男の更年期障害かと思い、病院ではなく鍼治療に通っていました。
これは後で先生に言われたのですが、じつはこのとき大腸がんにより腸から出血していたため、貧血を起こし、それが原因でめまいやふらつきが起こっていたそうです」
'05年には、講演中に呂律が回らなくなり、意識を失い、救急車で病院に運ばれてしまう。
「脳出血や脳梗塞の可能性が高いと、脳のCTを撮ったのですが、やはり異常なし。
誰もが脳の病気を疑う症状でしたので、まさか大腸がんから来る貧血だったとは思いもしませんでした。
その翌年の'06年、ついに下血。
肛門から大量出血し、そこでやっと大腸がんが発見されました。
当時の僕は『病気になれば人生の負け』という気持ちが強かった。
だから、異変があっても見て見ぬふりをしていました。
でもそれは大きな間違いだったことを思い知らされました」
金さんのように自覚症状がありながらも、それががんのサインと気が付かずに放置してしまうことはよくある。
日本消化器学会認定専門医で松生クリニック院長の松生恒夫氏は、大腸がんの兆候についてこう語る。
「頻繁に便秘になる、あるいは下剤を飲んでも治らないような便秘が10日間以上続くと注意が必要です。
それ以外にも下痢や軟便、便が細くなったり、トイレに行った後も残便感がある排便不良も大腸がんの兆候としてよく言われています。
腹痛やすぐおなかが張るようになったと訴える患者さんもいます。
腹圧がかかってくるとガスがたまりやすくなり、便やオナラが出なくなる代わりにゲップが増える傾向があります」
■その腰の痛み、もしかして
さらに大腸がんが進行すると「腸閉塞を起こし、そのうち頻繁に嘔吐するようになる」と語るのは、康心会汐見台病院院長の赤池信氏だ。
「しかも通常の嘔吐とは違って、胃液ではなく、便のような茶色い吐瀉物が出る人もいます。
ここまでくれば、かなり大腸がんが進行していると言わざるを得ません。
手遅れにならないためにも、大切なのが、大腸がんの場合、便を毎日観察することです。
便に血が混じる程度であれば、痔だと思って見過ごすこともありますが、それが何日も続けば、何か異常があると気付けるはずです。
また、3親等以内に大腸がんの人がいる場合は、リスクが高くなるというデータもあるので、家族の既往歴がある人は、こまめに検査を受けたほうがいいでしょう」
大腸がんには、直腸がんと結腸がんの2種類があり、兆候も微妙に異なる。
便が出る肛門付近にできる直腸がんなら肛門痛が起こる。
これは便が通るとき、がんに触れるからだ。腸がS字に曲がった部分にできる結腸がんなら中下腹部の痛みが発生する。
一方、大腸がんと並び罹患数の多い胃がんはどうか。
主な兆候としては、胸やけやみぞおちの痛み、食欲低下、体重減少(半年から1年間で体重の5%以上)、腹部膨満感などが挙げられる。
「胃がんが、他の部位のがんと違うのは、比較的痛みが早く出ることです。
具体的には、胃酸が胃にしみるような痛さです。
『がんは痛みが出たらすでに手遅れだ』と思っている人もいますが、胃がんの場合は、痛みが出たからといって、必ずしもがんが進行していたり、転移していたりするわけではありません。
自覚症状があってからでも十分回復の見込みはあります」(慶應義塾大学病院・腫瘍センター教授の西原広史氏)
さらに胃がんは腹部だけでなく、意外な部位に痛みが出ることもある。
消化器の神経は左側に集まっているので、左肩が痛くなることがある。
一方で通常のがんと比べ、進行が早く致死率が非常に高いスキルス胃がんは、腰の痛みがサインとなる。
元アナウンサーの逸見政孝さんも、歩けないほどの腰痛を訴えて病院を受診したところ「過労」と診断されたが、のちに検査でがんと判明。
その後、1年も経たずに亡くなってしまった。
全がんの中で、死亡者数のトップに立つのが、肺がん。
死亡者数は年間約7万4000人に上る。
肺がんは初期症状が薄く、検査をしても見落とされることが多い。
2月末には、杉並区の肺がん検診で胸部レントゲンの異常所見を見逃したために肺がんが悪化したとして、同区在住の70代後半男性が病院と区を相手取って損害賠償請求を起こしている。
このように非常に発見が難しいため、かなり進行した状態で見つかることが多い肺がんだが、前兆がないわけではない。
■おしっこの回数にも注意
がんになると、手足がしびれたりする「腫瘍随伴症候群」が起こることがある。
原因ははっきりしていないが、がん細胞が血中に異常なホルモンを分泌させ、それがしびれを引き起こしていると言われる。
がん患者全体の約20%が、この症候群を伴うとされているが、中でもその割合が高いのが肺がんなのだ。
3週間以上たんやせきが続いている、少し歩いただけで息が切れるといった症状に加え、手足のしびれが起こった場合、肺がんを疑って損はない。
年間の患者数は約2万1000人と数は多くないが、男性が罹りやすい膀胱がんにはどんなサインがあるのか?
獨協医科大学埼玉医療センター・泌尿器科准教授の井手久満氏が語る。
「血尿は膀胱がんのサインになります。
膀胱がんの場合『無症候性血尿』と言って、あまり痛みが伴わないのが特徴です。
喫煙者で、最近おしっこの回数が増えて、痛みもないのに血尿が出たという人は危険ですね。
夜間頻尿や『尿意を我慢できない』といった症状を訴えて来院される患者さんで、前立腺がんや前立腺肥大を疑って検査をしたところ、膀胱にがんが見つかるケースもあります」
人体の老廃物を濾過し、尿を作るのが腎臓だ。
歳を取るにつれて衰えてくると慢性腎不全、果ては腎臓がんのリスクが上がる。
腎臓がんも膀胱がんと同じく女性より男性のほうが罹患しやすい。
「初期の腎臓がんは、尿検査を受けて、『顕微鏡的血尿』で見つかるケースが多いです。
顕微鏡的血尿というのは、見た目にはわからないけれど、尿検査で血が混じっている状態が確認された尿のことを言います」(前出・井手氏)
腎臓がんは、自覚症状が少なく、検査で見つかることも多いが、腎臓の濾過機能が低下しタンパク質が流れ出るため尿が泡立つ、脇腹の痛み、原因不明の発熱など兆候がないわけではない。
「沈黙の臓器」と呼ばれるように、肝臓がんは、見つかったときにはすでにステージⅢ~Ⅳであることもザラ。
だが、いきなり肝臓がんになるわけではなく、基本は肝炎から肝硬変を経て、最終的に肝臓がんになるまで時間がある。
その間にわずかな症状が出る。
肝臓がんになれば、肌が黄色くなる黄疸が有名だが、その前段階で白目が黄色味を帯びることがある。
大腸がんや胃がんと同じく、急にお腹が張る症状が出ることもあるので、それらを見逃さないことが大切だ。
JA広島総合病院・肝臓内科主任部長の兵庫秀幸氏はこう述べる。
「一昔前は、肝臓がんの9割はB型、C型肝炎が原因と言われていましたが、それは過去のこと。
現在ではウイルスが関係しない肝臓がんが、約半数を占めます。
増えたのが、肝臓に脂肪がつく脂肪肝です。
脂肪肝の状態が30年続くと、肝硬変→肝臓がんへと変化していきます。
若いころから太っていて、『何となく体がだるい』、『疲れやすくなった』と感じる人は、脂肪肝の可能性が非常に高い。
この脂肪肝にいかに早く気付けるかが、肝臓がんを未然に防ぐ最も有効な手段と言えます」
なんとなく元気がないなど、原因がはっきりしない症状が続いているとき「もしかすると、がんかもしれない」と頭の片隅に置いておくだけでも、健康寿命は大きく違ってくる。
』